家庭でししとうを焼く際に最も多いトラブルが、フライパンやグリルの中での「突然の破裂・爆発」です。高温になった油が周囲に飛び散り、キッチンのコンロ周りを汚すだけでなく、顔や手に跳ねて火傷を負う危険もあります。この現象は偶然起きるのではなく、ししとう特有の密閉構造と物理現象による必然です。
ししとうの果皮はクチクラ層と呼ばれる強固なワックス状の膜で覆われており、内部には空気を含んだ空洞が存在します。火にかけると内部の空気と果肉から出る水分が急激に加熱され、気化して体積が数百倍に膨張します。しかし、皮が頑丈で気体の逃げ場がないため、風船のように限界まで内圧が高まり、耐えきれなくなった皮が一気に弾け飛ぶことで「ドカン」と爆発します。
この危険を完全にゼロにするのが、正しいししとうの下処理とヘタの取り方、そして破裂防止の穴あけです。
下処理のファーストステップは、軸の調整です。軸の先端は乾燥して硬くなっているため、包丁で2〜3ミリほど切り落とします。ヘタの周りにあるギザギザとしたガクの部分は、指や包丁の先でくるりと一周削ぐように取り除くと、口当たりが劇的に向上します。このとき、実の頭部ごと大きくちぎってしまうと、中の種が外にこぼれ出て焦げ付きの原因になるため注意してください。
そして最大の核心となるのが、空気穴の確保です。爪楊枝や竹串を使って実の中央から先端にかけて2〜3箇所プスプスと刺すか、あるいは包丁の刃先で1センチほどの浅い切り込みを1本入れるだけで、加熱時の水蒸気がスムーズに抜け、破裂を100%防ぐことができます。最後に、洗った後の水分をキッチンペーパーで徹底的に拭き取ることが、油跳ねを防ぎ香ばしい焼き目を付ける決定打となります。