かつて熱血指導の怒号とサンドバッグを叩く鈍い音が響き渡っていた、渋谷区代々木5丁目の小田急線代々木八幡駅・東京メトロ代々木公園駅至近の新日本木村ボクシングジム跡地。現地を取材・確認すると、当時の面影は完全に姿を消しています。
ジムが入居していた建物は閉館後に解体やリニューアルが行われ、現在は洗練された都会の街並みへと完全に溶け込んでいます。かつて後楽園ホールへ向かう名ボクサーたちが汗を流した階段や看板はなく、通りを行き交う若い世代の多くは、ここが日本ボクシング史に名を刻んだ名門の拠点であったことすら知りません。
しかし、ネット掲示板やSNS、オールドファンの間で語られる新日本木村ボクシングジム評判は、今も変わらず極めて熱を帯びています。
「代々木の木村ジムは、エリートはお断りのような泥臭さがあった。スパーリング大会を見に行くと、どの選手も気迫で相手を飲み込もうとしていて、見ているこちらの胸が熱くなった」「木村七郎会長は口が悪くて怖かったが、選手が負けて病院に行くときは誰よりも心配して付き添っていた。あれぞ昭和の男の生き様だった」
当時の練習生やファンが口を揃えるのは、木村七郎会長の「人情味」と「勝負への執念」です。設備が決して最新鋭ではなく、冬は寒く夏は蒸し風呂のような環境であっても、そこにはリングで生きる男たちの本物の魂が存在していました。