介護の仕事に従事しながらも、胸の奥底でくすぶり続けていたのは演技に対する純粋な情熱だった。元々、桐朋学園芸術短期大学で演劇の基礎を叩き込まれ、学生時代から演劇の魅力に取り憑かれていた彼にとって、板の上に立つことは自身の生き直す道そのものだったと言える。
沈黙を破り、彼が演劇界への一歩を踏み出したのが2019年の小劇場舞台『さよなら西湖クン』への出演だった。客席との距離が近い濃密な空間で、過去の過ちや葛藤をすべて背負いながら舞台に立った彼の芝居は、観客の心に強く揺さぶりをかけた。大規模な商業演劇ではなく、演出家や共演者と泥臭く作品を作り上げる作業の中で、彼は再び「表現者」としての第一歩を刻み始めたのだった。