そもそも、なぜこれほど無謀とも言える「50役」という過酷な設定が組まれたのでしょうか。その発端は、制作サイドが仕掛けた「声優の圧倒的な演技力で視聴者をどこまで圧倒できるか」という挑戦的なコンセプトでした。
最終回にふさわしい最大のインパクトを狙った制作陣は、物語を総力戦の「決戦」に設定。その結果、画面内に登場するキャラクター数が爆発的に増加しました。通常の現場であれば複数人の声優をキャスティングして分担するところを、本作のルールに則ってそのまま山寺宏一へ一括オファーしたという経緯があります。
アフレコ現場の舞台裏もまた壮絶を極めました。台本を受け取った山寺宏一自身、ページをめくってもめくっても自分の役名しか書かれていない異常な光景に思わず目を疑ったと後に明かしています。
収録現場では、瞬時に声帯のポジションを切り替えながら、青年から老人、甲高い悲鳴をあげる女声、野太い怪物の唸り声までを立て続けに吹き込んでいく作業が続きました。音響監督からの細かな要求にも即座に応え、テストを重ねることなく驚異的なスピードとクオリティでテイクを重ねていった姿は、現場スタッフをも唸らせました。