エジプト型が多数派の日本において、「なぜ自分は親指より人差し指が出っ張っているのか?」と疑問を抱く人は少なくありません。人差し指が親指より長い理由の真相は、指そのものの骨(基節骨・中節骨・末節骨)の長さではなく、甲の内部に埋まっている「中足骨(ちゅうそくこつ)」の長短に隠されています。
1920年代にアメリカの整形外科医ダドリー・モートンが提唱したこの骨格特徴は、医学界で「モートン趾(Morton's toe)」または「モートン足症候群」と定義されています。親指の根元を支える第1中足骨が通常よりも先天的・遺伝的に短く、相対的に第2中足骨の先端部が前方へ突出しているため、外見上は人差し指が親指よりも長く突き出して見えます。
モートン趾は病気や奇形ではなく、人類の進化過程で生じた自然な骨格バリエーションの一つです。樹上生活から直立二足歩行へと移行した進化史において、推進力を生み出す重心移動の軸が第1中足骨へ移行しきらなかった痕跡とも言われています。古代ギリシャの彫刻家たちがこの形状を「身体的調和と神聖な美の象徴」としてミロのヴィーナスなどに好んで彫り込んだのも、ヨーロッパ地中海沿岸にモートン趾の持ち主が多く実在していた背景と深く連動しています。
解剖学的な課題として、本来であれば強固な第1中足骨が受け止めるべき着地衝撃や蹴り出し時の体重負荷が、細い第2中足骨頭(人差し指の付け根)へと過剰に集中してしまう点が挙げられます。この力学的不均衡が、後述する慢性痛や足部トラブルの直接的な引き金となります。