この楽曲の真骨頂は、表層的な「高飛車な女の子のワガママ」の奥に張り巡らされた、極めてリアルで繊細な乙女心と心理的トリックにあります。
冒頭で提示される「髪型に気づくこと」「靴まで見ること」「返事は3つの言葉ですること」という無理難題は、支配欲から出た命令ではありません。これらはすべて「私の変化や存在を誰よりも細かく注視していてほしい」という、強い関心への渇望を代弁しています。「右手がお留守なのをなんとかして」という言葉は、素直に「手をつなぎたい」と言えない少女の精一杯の遠回しな甘えです。
物語の中盤、ショートケーキのいちごを我慢するエピソードや、「少しくらい叱ってくれたっていいのよ?」というフレーズが挟まれます。ここにおいて少女は、自分の身勝手さを完全に自覚していることが露呈します。何でも言う通りに従う召使いが欲しいのではなく、自分の我が儘を受け止めつつも、対等な目線で自分を窘(たしな)め、真剣に向き合ってくれるパートナーの存在を求めているのです。
そしてラストシーン、少女の傲慢な独白は予期せぬ物理的接触によって崩壊します。「危ないよ」と抱きしめられた瞬間、それまで張り巡らせていた「おひめさま」の鎧(よろい)は完全に脱げ去り、「…手をつなごう?」という、飾らない最小限の言葉で結ばれます。つまり、この曲は「世界を支配するお姫様」の歌ではなく、「大好きな人の世界の中心になりたかった、不器用な少女の恋の物語」なのです。