きたない君がいちばんカワイイ結末の真相|なぜ二人は破滅を選んだか

きたない君がいちばんカワイイ結末の真相|なぜ二人は破滅を選んだか

きたない君がいちばんカワイイ結末の真相|なぜ二人は破滅を選んだかにまつわる最新トピックを詳しく紐解きます。

本作が「読む劇薬」と呼ばれる所以は、突拍子もないアクシデントによって破滅するのではなく、登場人物たちの心理的欠落が一段ずつ着実に破滅の階段を降りていく緻密な構成にあります。全5巻で描かれた転落の軌跡は、極めて論理的かつ不可逆的なプロセスをたどりました。

序盤における二人の関係は、放課後の理科準備室で行われる愛莉からひなこへの一方的な加虐行為として提示されます。クラスの人気者である愛莉は、家庭や友人間で抱える過剰なストレスと完璧主義の重圧を、ひなこをゴミ箱に押し込め、嘔吐させ、汚物まみれにすることで発散していました。一方のひなこは、クラスに馴染めない孤独感を抱えており、愛莉からどれほど非人道的な扱いを受けようとも、「愛莉の特別な存在になれている」という歪んだ全能感と被虐の快楽によって精神を保っていたのです。

しかし、この均衡は脆くも崩れ去ります。中盤にかけて、愛莉の取り巻きたちとの不和やスクールカーストの動揺が表面化。さらに二人の密会が外部に漏れかけるサスペンスが展開します。追い詰められた愛莉は精神のバランスを崩し、学校を休みがちになります。ここで物語の力学が反転します。被虐者であったはずのひなこが、今度は衰弱した愛莉を自らの庇護下に置き、「自分なしでは生きられない状態」へ囲い込もうと能動的に動き始めたのです。

終盤で見られるひなこの激しい体調不良や妊娠を想起させる描写は、極度のストレスと愛莉への執着が生み出した心身の悲鳴でした。周囲の友人たちが良かれと思って差し伸べた救いの手さえも、二人にとっては「自分たちの閉じた聖域を破壊する暴力」としてしか知覚されませんでした。他者を徹底的に拒絶し、自己破壊的な結合を選んだ時点で、二人に残された選択肢は心中以外に存在しなかったのです。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。