岡田健史から水上恒司への改名は、単なるイメージチェンジや気まぐれによるものではありません。そこには、芸能界におけるタレントと所属事務所のあり方を問い直す、極めてシビアな契約上の経緯と個人の覚悟が存在していました。
事の発端は2021年春、岡田健史が所属していた芸能事務所「スウィートパワー(男性部門:スパイスパワー)」に対し、専属契約の解除を求めて東京地裁へ仮処分を申し立てたことでした。報道各社の取材や当時の裁判資料によると、事務所内部のマネジメント体制や労働環境、方針の不一致に対する強い不信感が背景にあったとされています。
その後、双方は同年8月に「契約満了日である2022年8月31日までは同事務所所属のまま活動し、満了をもって退所する」という条件で和解を成立させました。そして約束の期日を迎えた2022年9月1日、彼は自身の公式SNSを通じて、本名である「水上恒司」としてゼロから再スタートを切ることを正式に宣言したのです。
「岡田健史」という芸名は、前事務所の元社長の苗字に由来して名付けられたものでした。関係者の証言や当時のインタビューにおいて、彼は「岡田健史として生きた時間への感謝」を口にしつつも、「自らの人生を自分自身の名前で背負い、嘘偽りのない表現者として歩みたい」という強いアイデンティティへの回帰を語っています。看板であった芸名を潔く手放し、生来の「水上恒司」として生きる道を選んだ背景には、表現者としての純度の高い自立心が宿っていました。