仙石原すすき草原を訪れる旅行者の多くが抱きがちな誤解と、現地で直面しやすい盲点について解説します。
第一の誤解は、「草原のどこでも自由に歩き回れる」という思い込みです。実際には、環境保全と安全管理のため、観光客が立ち入れるのは中央を貫く直線約700メートルの遊歩道(一本道)のみに限定されています。遊歩道の両脇にはロープが張られており、草原の内部へ踏み込むことは厳格に禁じられています。遊歩道は行き止まり構造になっているため、最深部まで歩いたら同じ道を戻ってくる形となり、所要時間は往復で約30〜40分です。平坦に見えますが、道幅は2〜3メートルほどで、場所によっては砂利や石が露出しており、すれ違いにも配慮が求められます。ハイヒールやサンダルでの散策は転倒の危険があるため、スニーカーなどの歩きやすい靴が必須です。
第二の見落とされがちな真実は、この美しい景観が「手つかずの原生自然」ではなく、地元関係者と箱根町の緻密な維持管理によって守られている人工的な半自然草原であるという点です。草原は放置すると遷移が進み、数十年で雑木林へと変化してしまいます。これを防ぎ、ススキの健全な新芽を育てるために実施されているのが、毎年早春(例年3月中旬から下旬)の伝統行事である箱根仙石原の山焼きです。真っ赤な炎が草原を一気に焼き尽くすダイナミックな山焼きがあるからこそ、害虫が駆除され、秋に黄金色の穂が揃い踏みする奇跡の景観が保たれています。
また、美しい写真を撮りたいあまりに小型無人機(ドローン)を飛ばそうとするケースが見受けられますが、仙石原一帯は富士箱根伊豆国立公園の特別保護地区および保安林に指定されているエリアを含み、無許可の飛行や周囲の観光客に危険を及ぼす行為は厳格に規制されています。ルールとマナーを守った鑑賞姿勢が求められます。