アニメ媒体においてアガサ・クリスティの存在感が決定づけられたのが、2018年に公開された完全新作劇場版『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』でした。
劇中、横浜は澁澤龍彦の手によって濃密な異能の霧に包まれ、多くの異能者が自身の異能力に命を奪われる未曾有の危機に直面します。この事態に対し、英国本土から戦況を冷静に監視していたのがアガサでした。彼女は事態が世界へ波及することを防ぐため、特異点化しつつある横浜を丸ごと焼夷弾・戦略爆撃によって地図上から消滅させる「都市焼灼指令」を準備させます。
数百万の無辜の市民が暮らす都市であっても、世界の均衡を脅かすなら一瞬で切り捨てる冷徹さ。この場面でキャラクターに命を吹き込んだのが、実力派声優の坂本真綾さんです。
坂本真綾さんの演技は、透き通るような気品と優雅さを漂わせながらも、一切の慈悲を挟まない絶対的な冷気を完璧に表現していました。当時、劇場へ足を運んだファンやアニメライターの間でも「数言の台詞だけで画面の支配力が跳ね上がった」「優雅さと残酷さが同居する坂本真綾のボイスキャストは完璧な配役」と絶賛の声が相次ぎました。わずかな出番でありながら、作品全体における欧州勢力の不気味な底力を観客の脳裏に焼き付けた名シーンです。