しばき隊およびその周辺運動の構造を理解する上で欠かせないのが、運動のスポークスマンを務めた知性派と、現場で肉弾戦を担った武闘派という二面性です。
運動の中心にいた野間易通氏は、雑誌編集者としての経歴を活かし、SNSを通じた言論戦とメディア戦略を主導しました。書籍の出版やトークイベントを通じて「反差別=クールなカルチャー」というブランディングを構築し、従来の左翼運動に距離を置いていた一般市民や著名人を巻き込む旗振り役を務めました。
一方で、街頭の最前線で物理的な威圧力を誇ったのが、別動隊として活動した「男組(おとこぐみ)」です。その組長を名乗ったのが、刺青を誇示し「カウンターの切り込み隊長」と呼ばれた高橋直輝(本名:添田充啓・2018年死去)氏でした。元暴力団関係者としての過去を公言していた高橋氏は、体格の良いメンバーを集めて威嚇的なデモ包囲を行い、対立陣営との直接的な小競り合いを辞さない姿勢を貫きました。
この「洗練されたサブカルチャー的広報」と「粗暴な暴力装置」の同居こそが、しばき隊が初期に持った爆発的な推進力の源泉であり、同時に後に訪れる自壊の決定的な火種でもありました。現場では警察官に対する公務執行妨害や対立メンバーへの暴行などにより、高橋氏を含むメンバーが複数回にわたって逮捕される事態が相次ぎ、運動の暴力性が司法の場でも厳しく問われるようになったのです。