帯状疱疹の治療において、医師が口を酸っぱくして強調するのが抗ウイルス薬の投与タイミングです。明確なリミットとして設定されているのが、「皮疹(赤い斑点)が出現してから72時間以内」という基準です。
アメナメビル(製品名:アメナリーフ)やファムシクロビル(製品名:ファムビル)、バラシクロビル(製品名:バルトレックス)といった現代の抗ウイルス薬は、ウイルスのDNA複製を阻害して増殖を食い止める働きを持ちます。しかし、すでに増殖しきって神経を破壊し終えたウイルスを直接死滅させるわけではありません。ウイルスの増殖速度は発疹出現から3日(72時間)前後にピークを迎えるため、この臨界点を超える前に投薬を開始しなければ、神経線維への不可逆的なダメージを食い止めることが困難になります。
投与が遅れた場合に待ち受ける最大の脅威が、皮膚症状が完治した後も激烈な痛みが残り続ける帯状疱疹後神経痛(PHN)です。神経がウイルスによって傷つき、異常な興奮シグナルを脳へ送り続ける状態に陥ると、焼けるような灼熱痛や刺痛が数カ月、時には数年以上にわたって持続します。特に50歳以上の発症者では約2割がPHNへ移行するとされ、72時間以内の早期介入こそが後遺症を防ぐ防波堤となります。