日本における予言ブームの原点は、1973年に刊行されたある一冊の書籍にある。ルポライターの五島勉が執筆し、祥伝社から出版された『ノストラダムスの大予言』だ。高度経済成長の影で公害問題や石油ショック、冷戦下の核戦争の恐怖に怯えていた当時の日本社会において、本書は急速に浸透し、300万部を超える空前のベストセラーとなった。
この大ヒットは、国内の出版・メディア産業に計り知れない構造変化をもたらした。怪奇現象や都市伝説をエンターテインメントとして消費する新たな市場が開拓され、TV番組や雑誌がこぞって予言特集を組むようになったのだ。時代特有の閉塞感と出版界の巧みなマーケティングが合致したことで、ノストラダムス現象は単なる翻訳本の枠を超え、高度成長期から平成へと続く一時代の空気を決定づける文化現象へと昇華した。