アルバム『Attitude』の9曲目に鎮座する「Folktale」は、きらびやかなシンセポップや激しいロックサウンドが並ぶ同作の中で、ひときわ穏やかでアコースティックな手触りを持つ異色作です。しかし、その柔らかな音像に身を委ねていると、ふいに刃のように鋭い本質的な問いが胸を突きます。
当時の特番インタビューや音楽雑誌の手記において、大森元貴は楽曲制作の経緯について「綺麗なことばかりではない現実の中で、それでも人を信じることの難しさと尊さ」に直面していた心情を吐露しています。「誰かが愛した君を 誰かが嫌った君を/僕は愛せるだろうか」というあまりにも有名なフレーズは、単なる全肯定のラブソングではありません。他者からの評価やラベリングによって歪められがちな人間の本質を前にして、自分自身が相手を無条件に受け止められるのかという、誠実すぎる自問自答が刻まれています。
タイトルの「Folktale」とは、英語で「民話」「おとぎ話」を意味します。おとぎ話の世界では善悪が明快に分けられ、最後にはハッピーエンドが約束されることが多いものです。しかし、大森元貴が提示したのは「靴擦れだらけの希望」であり、傷つきながら歩む人間の不完全さそのものでした。大森は「優しさだけで生きていけたら」という純粋な願いを提示しつつも、現実社会がそう単純ではないことを誰よりも理解しています。だからこそ、この曲に込められた祈りは、無責任なポジティビティに傷ついた現代人の孤独な心へ深く染み渡るのです。