ネット検索で今なお目にする「炎上」という過激な言葉。その実態は、悪意あるスキャンダルや失言とは全く異なる性質のものでした。
発端となったのは、彼が10代前半の頃にYouTubeへ投稿していた洋楽ヒップホップ楽曲のピアノ弾き語りカバーです。当時、英語の歌詞に含まれていた人種差別的なスラング(Nワード)の歴史的背景やタブー性を理解しないまま、原曲の歌詞通りに歌唱していた事実が海外のリスナーによってクローズアップされました。
事態を重く受け止めた藤井風は、逃げることなく自身の言葉で即座に長文の英文メッセージを発信しました。「当時はその言葉が持つ重悪な意味や歴史的文脈を全く知らず、ただ音楽として歌詞をなぞってしまっていた」「誰かを傷つける意図は決してなかったが、無知であったことを深く恥じ、心からお詫び申し上げる」という趣旨の、非を率直に認める真摯な謝罪でした。
関係者や海外カルチャーに詳しい音楽ジャーナリストの間でも、この対応の迅速さと誠実さは高く評価されました。しかし、一度火がついたSNSのアルゴリズムは、文脈を無視したバッシングや過激な言葉の応酬を生み出し続けます。「愛と調和」を活動の根底に置いてきた彼にとって、自身のアカウントが誰かを傷つけたり争いを誘発したりするプラットフォームになること自体が、耐え難い痛みであったことは想像に難くありません。ネット空間での消耗を断ち切り、表現者としての純度を保つために選ばれたのが、アカウントの閉鎖という道でした。