昭和歌謡の歴史において、1970年代中盤はフォーク、アイドル歌謡、そしてムード歌謡が熾烈なチャート争いを繰り広げた黄金期でした。その渦中の1974年(昭和49年)7月5日にシングル盤としてリリースされたのが、敏いとうとハッピー&ブルーの『私祈ってます』です。
本作の作詞・作曲を手掛けたのは、ムード歌謡界の巨匠として知られる中川博之です。『ラブユー東京』や『さそり座の女』など、都会の哀愁と女性心理を巧みにメロディへと昇華させてきた中川は、本作において極めてシンプルでありながら一度聴いたら忘れられない哀切の旋律を紡ぎ出しました。
特筆すべきは、本作がハッピー&ブルーのための書き下ろしオリジナル曲ではなかった点です。原曲は1970年に歌手・俳優の佐川満男がシングルとして発表した楽曲でした。佐川版はスマッシュヒットにとどまりましたが、その類まれなメロディの強度と歌詞のドラマ性に目をつけたリーダーの敏いとうがグループの勝負曲として白羽の矢を立て、見事なリメイクによって約100万枚とも言われるメガヒットへと導いたのです。