劇場の客層に明らかな地殻変動が起きている。かつて客席を埋め尽くしていた年配男性の中に混じり、20代から30代の若者、クリエイター風の女性二人組、あるいは海外からのバックパッカーの姿が日常の風景となった。
この変化の起爆剤の一つとなったのが、ビートたけしの青春時代を描いたNetflix映画『浅草キッド』の世界的なヒットだ。デジタルネイティブ世代にとって、劇中に描かれた猥雑で温かい昭和の芸人・踊り子たちの生き様は、ノスタルジーではなく「まったく新しい刺激的な異世界」として映った。
SNSで消費される表層的な昭和レトロカルチャーのブームを超え、若者たちは「作られていない本物の昭和」を求めて上野の路地裏へとたどり着く。スマートフォンの画面越しでは絶対に得られない、汗と光と音が織りなす空間の重圧感に、彼らは圧倒され、そして魅了されている。