一方で、課題もある。アスファルトの拡大と夜間照明、そして絶え間ない交通騒音によって、都市部における鈴虫の生息域は年々縮小している。
日本人は歴史的に、鈴虫や松虫の音を「ノイズ」ではなく「情緒ある音楽」として脳の言語野で処理する稀有な音理解の文化を育んできた。西洋文化圏では虫の音を雑音として捉える傾向が強いのに対し、日本の感性は虫の声を詩歌に詠み、生活の中に組み込んできた経緯がある。
この貴重な音響文化を後世に残すため、現在、全国各地の保全団体や音響エンジニアが協力し、鈴虫が生息する自然の音環境を3D立体音響(イマーシブオーディオ)で超高精細に保存するプロジェクトが急速に進められている。