日本人初のアルペンスキーワールドカップ表彰台に立った伝説のレーサー・岡部哲也は、現代のギアにおけるターン技術について「道具が持つ本来の性能をいかに邪魔しないか」が鍵だと指摘する。レースの世界で培われた極限の滑走理論は、現在では一般スキーヤーの技術上達にもダイレクトに還元されている。
岡部が唱えるターン理論の核心は、遠心力と自重のバランス制御にある。無理な身体の捻転で作るターンではなく、ターン弧に対して身体の軸(体幹)を正しく同調させることで、板は勝手に美しくたわみ、トップから谷側へと滑らかに落ちていく。過度な力みを捨て、雪面からの反発を素直に受け止めることこそが、ハイスピード領域でも破綻しない洗練されたターンの極意だ。