作中初期、風柱・不死川実弥と水柱・冨岡義勇の関係性は最悪そのものでした。柱合会議で義勇が発した「俺はお前たちとは違う」という言葉は、他者を下に見た発言ではなく「自分は柱にふさわしくない」という自責の念から出たものでしたが、事情を知らない実弥からすれば単なる傲慢な態度に映ります。
公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』における「柱相関言行録」でも、実弥から義勇への評価は「嫌い、嫌い」「ツラがむかつく」と極めて辛辣に記されていました。一方の義勇側は「怒りっぽい」「話をあまり聞いてくれない」と認識しつつも、実は実弥を嫌ってはおらず、むしろ仲間として接したい気持ちを抱いていたという致命的な温度差が存在していました。
根本的に二人は、大切な者を鬼に奪われ、心に深い傷を負った者同士です。実弥は弟の玄弥を遠ざけるために攻撃的な態度を取り続け、義勇は錆兎の死に対する罪悪感から心を閉ざしていました。似た痛みを抱えながら、表出する防衛本能が「凶暴な威嚇」と「沈黙の拒絶」という正反対の形をとったため、激しく衝突せざるを得なかった構造が見えてきます。