フィブラストスプレーの有効成分であるトラフェルミン(遺伝子組換え)は、ヒトの生体内に存在する塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と同一のタンパク質です。皮膚が深い損傷を負った際、通常は周囲の細胞から分泌される微量の増殖因子がトリガーとなって組織修復が始まります。トラフェルミンは、その修復シグナルを人為的かつ濃厚に創面へ直接届ける役割を果たします。
その主な作用は、毛細血管を急速に張り巡らせる「血管新生作用」と、コラーゲン線維を産生する「線維芽細胞の遊走・増殖促進」の2点に集約されます。血流が途絶え、低酸素状態に陥った組織に新たな栄養ルートを開通させることで、健康で鮮紅色の肉芽組織(患部を埋める新しい細胞の土台)を一気に盛り上がらせるのです。
臨床におけるフィブラストスプレーの効果が最も発揮されるのは、虚血や圧迫によって自力での治癒が望めなくなった褥瘡(床ずれ)や、真皮深層に達した熱傷潰瘍、血行障害に伴う下腿潰瘍・糖尿病性潰瘍です。壊死組織を除去した清浄な創面に1日1回噴霧することで、これまで数カ月を要していた創傷閉鎖までの期間を大幅に短縮できることが、多施設共同の臨床試験データによって証明されています。