「昔はもっと目と眉が近かったはずなのに、年々離れてきている気がする」という実感は、決して気のせいではありません。目と眉毛の距離が広い原因と加齢には、切っても切れない解剖学的なメカニズムが存在します。その中心にあるのが、まぶたを持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋)の緩みや皮膚の伸展によって引き起こされる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」と眉毛の位置関係です。
人間は本来、まぶたの力だけで目を開きます。しかし、加齢や長年のコンタクトレンズ装用、スマートフォンの長時間凝視による眼精疲労などが重なると、まぶたを持ち上げる筋力が低下します。すると脳は「視界が狭い」と判断し、無意識のうちにおでこの筋肉である「前頭筋(ぜんとうきん)」を使って眉ごと目元を上に引っ張り上げようとします。この現象が、形成外科の臨床現場で指摘される「代償運動」です。
この代償運動が日常化すると、額には深い横ジワが刻まれ、眉毛の位置は本来の位置よりも数ミリから1センチ近く上方へと定着してしまいます。さらに、眉を上げる際に動く「眉丘筋(びきゅうきん)」が過剰に発達してコブのように盛り上がり、眉の下に広大で平坦なまぶたの余白が取り残されます。つまり、目と眉の距離の拡大は、単なる皮膚のたるみだけでなく、「まぶたの機能低下に対する筋肉の代償運動の結果」として生じる構造的な老化現象なのです。