なぜ、あれほど飛ぶ鳥を落とす勢いだった若き名優が足を止めざるを得なかったのか。2023年3月、主演予定だった大型舞台『エヴァンゲリオン ビヨンド』の開幕直前での無念の降板。所属事務所からの「心身の不調により休養をいただく」という異例の公式発表は、業界内外に張り詰めた緊張をもたらしました。
取材関係者や舞台制作スタッフの証言を総合すると、その決定的な引き金となったのは「極度のオーバーワーク」と「役柄への過剰同化」による心身の摩耗でした。当時の村上虹郎のスケジュールは常軌を逸していました。朝ドラ『カムカムエヴリバディ』での長期撮影、映画『孤狼の血 LEVEL2』での壮絶な演技、さらには『るろうに剣心 最終章 The Beginning』や『東京リベンジャーズ2』といったアクション大作の連続。肉体的にも精神的にも限界値を超えた負荷がかかり続けていたのです。
彼はもともと、単に台詞をなぞる器用なタイプではなく、役のトラウマや情念を自らの内面に憑依させる「過剰なまでのリアリズム」を信条とする表現者です。『東京リベンジャーズ2』で演じた羽宮一虎のような、精神的に追い詰められた破滅型のキャラクターを演じる際、役と現実の自己との境界線が曖昧になるほどの没入を見せていました。現場関係者からは当時、「現場で時折、呼吸が浅くなり限界を迎えているように見えた」という証言も聞かれました。突然のブレーキは、表現者として完全に壊れてしまう前に心身が発した、必然のSOSだったと言えます。