ポップカルチャーの企画展で若年層の来館者が押し寄せる一方で、上野の森美術館が日本の近現代美術史において担ってきた功績は見逃せません。その象徴が、毎年3月に開催される「VOCA展(現代美術の展望─新しい平面の作家たち)」と、春の恒例公募展である「上野の森美術館大賞展」です。
1994年にスタートしたVOCA(The Vision of Contemporary Art)展は、40歳以下の優れた作家による「平面」作品を全国の学芸員や美術評論家が推薦する完全指名制の公募展です。過去の受賞者・出品者の顔ぶれを見れば、その選美眼の確かさは一目瞭然でしょう。
- 村上隆(現代美術家・世界的なポップアートの旗手)
- 奈良美智(世界各地の美術館で個展を開催する現代美術家)
- 蜷川実花(写真家・映画監督)
- 会田誠(現代日本社会を鋭く批評するアーティスト)
今日のアートシーンを牽引する名だたる巨匠たちが、無名あるいはキャリア初期に自らの可能性を世に問うた場所こそが、この上野の森美術館なのです。展覧会スケジュールをチェックする際、大規模なタイアップ展の合間に組み込まれる「VOCA展」や「上野の森美術館大賞展」に注目すると、この美術館のもうひとつの顔である「日本の芸術界を耕すインキュベーター(育成装置)」としての凄みが浮き彫りになります。館内に漂う熱気は、単なる商業展とは一線を画す純粋な創造性の息吹に満ちています。