日本の商習慣では長らく「正式な手書きの領収書」が美徳とされてきましたが、税務実務の現場における評価は180度異なります。結論から言えば、個人事業主の領収書におけるレシート代用の真相は、むしろ「レシートのほうが手書き領収書より証拠能力が圧倒的に高い」というのが税務のプロの一致した見解です。
手書きの領収書には「日付・金額・宛名・但し書き」しか記載されないことが多く、具体的に何を購入したのかが分かりません。一方、店舗のレジが自動発行するレシートには、購入日時(分単位まで)、店舗名、購入した商品ごとの具体的な品名、単価、数量が印字されます。調査官の立場から見れば、手書き領収書は「私物を買った後に店員に頼んで合計金額だけを書いてもらった可能性」を排除できませんが、品目が明記されたレシートであれば一目で事業用資材か日用品かを判別できます。
また、商習慣として多用されてきた個人事業主の領収書の宛名に「上様」が使われてきた理由は、かつて取引先の名を伏せる目的や、宛名書きの手間を省く便宜上の慣習に過ぎません。しかし、現在の税務署はこの「上様」を非常に厳しく見ています。宛名が空欄、もしくは上様になっている領収書は、「他人が捨てた領収書を拾い集めて経費の水増しに使ったのではないか」という架空経費の疑念を真っ先に招く引き金となります。
さらに危険なのが但し書きの記載です。個人事業主の領収書で但し書きを「品代」とするデメリットは、税務調査において「中身を隠さなければならないやましい私的支出ではないか」と疑われる点にあります。家電量販店でゲーム機や私用家電を購入した場合でも「品代」と書かせれば一見経費に見えてしまいますが、調査官は怪しい品代の領収書を見つけると、購入店舗へ反面調査を行い、店舗側のジャーナル(電子売上台帳)から実際の購入履歴を取り寄せます。そこで嘘が判明した場合、悪質な仮装隠蔽とみなされ、重加算税(最大40〜45%)が課される致命的な結末を迎えます。