なぜウナギであり、「う」の付く食べ物だったのか。その背景には、古代中国から伝わる陰陽五行説が深く関わっている。五行思想において、季節の変わり目である「土用」は「土」の気にあたる。そして、十二支の「丑」は「水」の気を帯びた方角や時間を示すとされる。
土の気が強まる時期に、対抗する力や補う要素を取り入れることで万物の調和を図る——。こうした思想のもと、「丑(うし)」の日には「う」の付く食材を食べて邪気を払い、無病息災を願う風習が生まれた。昔から「丑の日に『う』の付くものを食べると夏負けしない」という言い伝えが存在したのだ。
単なる語呂合わせに見える習慣も、命を守るための切実な生活の知恵だった。厳しい暑さで体力が奪われがちな季節に、栄養価の高い食べ物を意識して摂取する習慣付けとして、陰陽五行説の理論が巧みに用いられていたのである。