日本五大昔話の一つにも数えられる『舌切り雀』は、善悪の対比を鮮やかに描いた民話の代表格です。物語の骨子は、隣り合って暮らす(あるいは夫婦である)心優しい「おじいさん」と意地悪で欲深い「おばあさん」の対比から始まります。
ある日、おじいさんが可愛がっていた手乗りの雀が、おばあさんが障子張りのために用意していた米粉の糊(洗濯糊)を誤って食べてしまいます。激怒したおばあさんは、「大事な糊を盗み食いした」としてハサミで雀の舌を無残に切り落とし、空へと追い払ってしまいます。傷ついた雀を案じたおじいさんは、遠く広がる竹林を分け入り、「雀のお宿はどこだ」と懸命に探し歩きます。
やがて辿り着いた「雀のお宿」では、傷の癒えた雀たちが現れ、命の恩人であるおじいさんを温かく迎え入れます。豪華な馳走と華やかな「雀の踊り」でもてなされたおじいさんは、別れ際に「重いつづら」と「軽いつづら」のどちらか一方を土産に選ぶよう促されます。無欲なおじいさんは「年寄りには軽い方がありがたい」と小さなつづらを選んで帰宅。家で開けてみると、中からは金銀財宝や小判、絹織物が溢れ出しました。
これを目撃したおばあさんは欲望に目を眩ませ、自分も雀のお宿へと押し掛けます。歓待の場でも横柄に振る舞い、無理やり差し出された選択肢から「重いつづら」を強奪するように背負って帰路につきます。しかし、欲に目が眩んだおばあさんが道中で待ちきれずにフタを開けると、中からおびただしい数の化け物や毒蛇、百足、鬼が現れ、恐ろしい報いを受けるという結末を迎えます。