教科書に載る前島は、お堅い「官僚の祖」のように描かれがちだ。しかし、その実像は極めてアグレッシブな起業家であり、既存の権力構造への挑戦者だった。江戸幕府の崩壊という大激動期を生き抜き、藩閥政治の圧力に抗いながら、民間の力を活用して郵便網を作り上げた。
飛脚問屋との交渉や、民間資金の導入など、彼のアプローチは極めて現実的かつビジネスライクだった。現在のデジタル庁や政府が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)が、官僚的な縦割りや前例踏襲主義で迷走する姿を見るにつけ、前島のような「突破力のある民間感覚を持ったリーダー」の不在が悔やまれる。形骸化したルールを壊し、実利を取る。その荒々しいまでのバイタリティこそ、今の日本に最も必要なものだ。