成人期を迎えてから「短期間でほくろが目に見えて増えた」「元々あった小さな点が急に盛り上がってきた」と感じる場合、その背景にはホルモンバランスの劇的な変動(妊娠・出産や過度のストレスによる副腎皮質刺激ホルモンの影響)のほか、稀に皮膚の悪性腫瘍が潜んでいるケースがあります。
最も警戒すべき疾患が、メラノサイトが癌化して発生する悪性黒色腫(メラノーマ)です。日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも強調されている通り、早期発見が生死を分ける極めて悪性度の高い皮膚癌ですが、初期段階では一見すると良性のほくろと酷似しているため見落とされがちです。臨床現場では、国際的に標準化された「ABCDEルール」を用いたスクリーニングが推奨されています。
日本人の場合、足の裏(足底)や手のひら、爪の生え際などに発生する「末端黒子型メラノーマ」の割合が高い傾向にあります。日常的に強い摩擦や刺激を受ける部位に新たな黒班が生じ、短期間で拡大している場合は、肉眼判断に頼らず皮膚科で「ダーモスコピー(特殊な拡大鏡を用いた無侵襲検査)」を受けることが命を守る鉄則です。