競技引退後のアスリートが直面する最大の難関がセカンドキャリアですが、髙橋成美の抜擢劇は異例のスピードでした。2021年にJOC理事に就任した際、スポーツ界内外から驚嘆の声が上がりました。年功序列が色濃く残る日本の競技団体において、20代後半の女性アスリートが理事の席に座る前例は極めて稀だったためです。
決定打となったのは、慶應義塾大学総合政策学部(SFC)を卒業した知性と、卓越したマルチリンガル能力です。父親の仕事の都合で幼少期を中国・北京で過ごした経験から中国語をネイティブレベルで操り、カナダ・アメリカを拠点にした長期遠征生活を通じて英語を完璧に習得しました。国際スケート連盟(ISU)の総会や海外要人との折衝において、通訳を介さずに自らのロジックで直接議論を交わせる人材は、日本スポーツ界において極めて貴重なアセットでした。