レンゲですくい取り、口へ運んだ瞬間に広がるのは、これまで経験したことのない感動だ。皿を傾けても一切焦げつかず、ベタつかずに滑り落ちる。箸で突き刺しても身離れがよく、全くくっつかない。そして口に含めば、歯に絡みつくどころか滑らかに解け、濃厚な卵黄とラードのコクが上品な甘みとともに広がっていく。
この驚異的な粘らない質感は、油と水、そして卵黄のタンパク質が加熱によって極限の乳化状態(エマルション)を形成することで生まれる。単なる科学的計算だけでは決して到達できない、職人の直感と長年の掌の感覚が織りなす奇跡のテクスチャーなのだ。