本田美奈子.さんの病床生活を語る上で欠かせないのが、無菌室から届けられた奇跡のアカペラ音源と、作詞家・岩谷時子氏との運命的な交差です。
当時、岩谷氏も同じ順天堂医院に大腿骨骨折で入院していました。偶然にも同じ病院にいた二人は、手紙を通じて励まし合います。身体の自由が利かず筆を執るのも苦しい中、岩谷氏は本田さんを元気づけるために病室で新たな詞を書き下ろしました。それが名曲「つばさ」の歌詞の一節や、讃美歌「アメイジング・グレイス」の日本語詞です。
本田さんは、抗がん剤治療の激痛と極度の体力低下に苦しみながらも、病室のボイスレコーダーに向かって澄み切った声で「アメイジング・グレイス」を歌い上げ、岩谷氏の病室へ届けました。ガラス越しに聴いた主治医や看護師たちが涙を流したというこの録音テープは、のちに特番や追悼アルバムで公開され、日本中に深い感動を与えました。