神社で奏上される代表的な祝詞(のりと)の中に、「惟神霊幸倍ませ(かむながら たまちはへませ)」という神拝詞(しんぱいし)があります。この言葉は、神道のエッセンスを凝縮した祈りのフレーズとして知られています。
ここで使われる惟神霊幸倍ませの意味は、「神の御心のままに、どうぞお導きいただき、お恵み・お守りください」という謙虚な誓願です。自己の利己的な欲望や計算高いエゴ(我)を前面に押し出すのではなく、まず森羅万象を生かし育む大いなる力へ敬意を払い、委ねる姿勢を示しています。
『古事記』の神話世界でも、八百万の神々は独裁的な絶対神によって統制されるのではなく、合議を重ねて調和を見出します。神道において善悪を分ける基準は「自然の運行に沿っているか(清浄・調和)」あるいは「逆らって乱しているか(穢れ・滞り)」であり、この神道根本思想の核心に「かむながら」の感覚が息づいています。