改名騒動の際、メディアやファンが最も懸念したのは「YSLという象徴的なロゴが抹消されてしまうのか」という点でした。3つのアルファベットが垂直に組み合わされたグラフィックは、1961年に著名なグラフィックデザイナー、アドルフ・ムーロン・カサンドラが手掛けたもので、「カサンドラロゴ」と呼ばれ半世紀以上にわたりブランドのシンボルとして愛されてきました。
エディ・スリマンは紙袋やタグ、ブティックの外観をシンプルなサンセリフ体の「SAINT LAURENT PARIS」へと置き換えましたが、カサンドラロゴを完全に消し去ることはしませんでした。現在でもアイコンバッグとして世界的なヒットを記録する「ルー(LOU)」カメラバッグや「ル・サンカセット(LE 5 À 7)」、ウォレットのセンター金具には、誇らしげにメタル素材のカサンドラロゴが鎮座しています。
一方、コスメ部門の「イヴ・サンローラン・ボーテ」においては、このカサンドラロゴこそが最大の武器です。ベストセラーの「ルージュ ヴォリュプテ」シリーズやクッションファンデーションのコンパクト中央に刻まれたゴールドのYSLロゴは、化粧ポーチから取り出す瞬間の高揚感を演出する決定的な記号として、一切の変更なく機能し続けています。