物語終盤、杜王町を恐怖に陥れた連続殺人鬼・吉良吉影との激突において、虹村億泰は最大の危機に直面します。吉良が放った「キラークイーン」第1の爆弾と猫草の空気弾による複合攻撃を受け、腹部を激しくえぐり取られた億泰。駆けつけた東方仗助がすぐさま「クレイジー・ダイヤモンド」で傷口を修復したものの、呼吸も脈拍も停止したままでした。どれほど完璧に肉体を治癒しても、一度完全に抜け落ちた魂を呼び戻すことはできない――それは仗助自身が祖父の死で思い知らされた残酷なルールでした。
絶望的な状況下で億泰の意識が漂ったのは、深い霧に包まれた生と死の狭間でした。そこで億泰は、かつてレッド・ホット・チリ・ペッパーの手にかかって命を落とした最愛の兄・虹村形兆の魂と再会を果たします。生前、常に兄の後ろを歩き、すべての判断を兄に委ねて生きてきた億泰は、無意識のうちに「兄貴についていく」ことを望みました。
しかし、形兆は億泰の甘えを毅然と突き放します。「行き先を決めるのはお前だ、億泰。お前が決めるんだ」と告げられた億泰は、深く自問自答した末に、自分自身の魂で答えを導き出しました。
「杜王町に行く……仗助たちと、あいつらと暮らすのが楽しいからよぉ」
この瞬間、億泰は誰かに従うのではなく、自らの強い生きる意志によって現世への帰還を選択しました。仗助が早人を連れて万策尽き、吉良の空気弾に追い詰められた絶体絶命の刹那、ザ・ハンドの右手で空気弾を削り取って覚醒した億泰の姿は、第4部における最大のカタルシスとして読者の胸に刻まれています。医学的な回復を超え、「自分の人生を自分で決めた」魂の成長こそが、彼の奇跡的な復活の正体でした。