地域を揺るがした突然の撤退劇の背景には、単なる一店舗の不採算にとどまらない、和歌山市特有のモビリティ構造とリテール戦略の不一致が存在していました。調査報道によって浮き彫りになった決定的な要因は主に3点に集約されます。
第一の要因は、徹底的な車社会における駐車場の不便さです。ドン・キホーテの収益モデルは、深夜帯の若者需要だけでなく、日用品や食品の「まとめ買い(バスケット単価の引き上げ)」に大きく依存します。しかし、ぶらくり丁店はアーケード街の中に位置し、直結の大型自走式立体駐車場を持っていませんでした。近隣の提携駐車場を利用せざるを得ず、大量の商品を買い込んだ顧客がアーケードを歩いて車まで運ぶ導線は、自家用車移動が基本である和歌山市民のライフスタイルと乖離していきました。
第二に、中心市街地の急速な歩行者通行量の減少が挙げられます。和歌山市の「中心市街地活性化基本計画」に関する追跡データを見ても、本町通周辺の平日歩行者数は2000年代以降、一貫して右肩下がりを続けました。オープン当初の目新しさが薄れるにつれ、ついで買いを行う歩行者層そのものが消失し、客単価・来店頻度の双方が限界に達したのです。
第三の理由は、運営会社(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス:PPIH)の郊外シフト戦略です。当時、全国的に進められていた「MEGAドン・キホーテ」への業態転換とロードサイド展開の波が和歌山にも押し寄せていました。中心市街地の狭小・多層階ビルで高コストな店舗運営を維持するよりも、幹線道路沿いに広大な平置き駐車場を備えた大型店舗を構える方が、投資対効果において圧倒的に有利であるという経営判断が下されたと言えます。