菅氏の政治キャリアにおいて、国民的知名度を一気に跳ね上げた決定的な契機が、2019年4月1日の新元号発表でした。「新しい元号は、『令和』であります」と墨書を掲げた姿は瞬く間に全国へ拡散され、若者を中心に「令和おじさん」の愛称が定着しました。
この元号発表の舞台裏には、緻密な情報統制と計算がありました。元号選定の手続きは極秘裏に進められ、発表当日の朝まで閣僚にすら最終候補が伏せられていたほどです。当時、新元号の発表役を首相自らが行う案も取り沙汰されていましたが、小渕恵三官房長官が「平成」を発表した前例を踏襲し、菅氏が掲げる方針が貫かれました。
それまで「永田町の陰の実力者」「無表情なスポークスマン」という近寄りがたいパブリックイメージを持たれていた菅氏が、パンケーキ好きという一面や気さくな笑顔とともにメディアで取り上げられるようになり、世論の好感度は急上昇しました。この強固な親しみやすさの獲得こそが、のちの自民党総裁選での圧勝と菅義偉総理大臣就任へと直結する最大の推進力となったのです。