この一件を単なる「うかつな失言」として片付けることは、遊戯王 作者 発言の真相を見誤ることにつながります。高橋和希氏の歩んだ道筋と作劇思想を振り返ると、あの発信の底流にあった切実な動機が浮かび上がってきます。
高橋和希 経歴を紐解くと、決して順風満帆な若手エリート作家ではありませんでした。1980年代から長きにわたる下積み時代を経験し、幾度もの打ち切りや連載不採用の挫折を味わいながら、30代半ばにして『週刊少年ジャンプ』で『遊☆戯☆王』の連載を勝ち取り、世界的な成功を収めた遅咲きの苦労人です。
作品を熟読しているファンであれば周知のとおり、高橋氏の作家人生を貫いていたのは「反戦」「自己決定の尊さ」「対等な信頼関係」という極めて明確なヒューマニズムでした。『遊☆戯☆王』の終盤、古代エジプト編や劇場版『THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』に至るまで、物語は常に「武力や圧倒的権力への抵抗」「自分の運命を他人に委ねず、自分のカード(選択)で切り拓く姿勢」を描き続けてきました。
晩年の手記やインタビューで語られていた言葉の数々からも、高橋氏が「未来を担う若い世代が、無関心のまま自らの権利や平和を手放してしまうこと」に対して、並々ならぬ危機感を抱いていたことが窺えます。2019年の投稿は、一人の市民としての痛切な危機意識が、最も身近で強力な自己表現ツールであったイラストレーションと結びついた結果起きた現象だったといえます。