実際の利用客は、この場所をどのように記憶し、どのような評価を下していたのだろうか。インターネット上の蓄積された膨大なレビューと、閉店時のA to Z cafeに対するネットの反応を多角的に分析すると、深い愛着と同時に特有の課題も見えてくる。
肯定的な評判と口コミで圧倒的多数を占めたのは、空間の特別感に関する声である。「ランチタイムに訪れると、都会の真ん中とは思えない静かな木の香りに包まれた」「窓際のカウンターや屋上のウッドデッキから眺める夕暮れ時の六本木・南青山の街並みが忘れられない」といった情緒的な回想が目立つ。南青山の屋上テラスカフェとしての開放感は、他店には代えがたい魅力であった。
一方で、熱狂的な人気店ゆえの現実的な課題を指摘する声も存在した。ビル最上階へのアクセス手段が定員6名程度のエレベーター1基のみであったため、週末のピーク時には1階のエントランス付近まで行列が伸び、「案内までに1時間以上待つのが常態化していた」という点である。また、人気のテラス席や小屋に隣接するソファ席は予約が取りづらく、席による当たり外れの感覚を抱く客もいた。
それでも2023年秋のクローズ告知時には、X(旧Twitter)やInstagramに「学生時代にデートで通った思い出の場所」「ここでアートの面白さを知った」「人生の転機のたびに訪れていた」といった感謝のメッセージが数千件規模で投稿された。単なる飲食店の枠を超え、個人の人生の記憶と密接に結びついていたことが窺える。