茶道三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)において、跡継ぎの結婚式は宗中最大の慶事と位置づけられます。しかし、華やかなメディア露出が目立つ現代のセレブリティとは異なり、表千家はその格式の高さから極めて抑制的な儀礼を貫いてきました。
裏千家においては、元皇族との婚姻など社会的な話題性が高い慶事の際に公の祝賀行事が広く報じられる傾向がありますが、表千家は「不言実行」の侘びの気風を尊び、行事の進め方も極めて慎み深いのが特徴です。関係者の証言によると、結婚の儀は千家の祖先を祀る祖堂への奉告に始まり、大徳寺での献茶、限られた重鎮門弟と親族による披露が粛々と執り行われます。
茶道教室を主宰する古参の門弟は、かつての祝宴の様子について次のように振り返ります。
「先代や当代の慶事の際も、私ども一般の同門会員には会報を通じて正式に報告されるのみで、事前の騒ぎ立ては一切ありませんでした。奥様のお人柄は、初釜や家元茶会の折、床の間の設えやお菓子の選び方、水屋から漂う静謐な差配の美しさを通して自然と伝わってくるものです。目立つことではなく、家元を引き立てる影の力こそが、表千家における真の格式と受け止められています」