創価学会が主張する政治理念を理解するうえで、避けて通れないのが中道主義 仏教用語としての本来的な意味合いです。仏教史において「中道(ちゅうどう)」とは、釈迦が修行の過程で悟った「快楽主義」と「苦行主義」の双方の極端を離れた実践(八正道)に端を発します。その後、大乗仏教の思想家・龍樹(ナーガールジュナ)の空観や、天台教学における「空・仮・中」の三諦円融(さんたいえんゆう)の思想へと深化していきました。物事を「有か無か」「善か悪か」といった固定的な二元論で捉えるのではなく、関係性の連鎖(縁起)の中で捉え直す高度な弁証法哲学です。
この古代哲学を現代社会の運動論へと換骨奪胎したのが、創価学会の歴代指導者たちでした。初代会長・牧口常三郎が提唱した「価値論(利・善・美)」と日蓮仏法の生命論を土台に、戦後の荒廃期に第2代会長・戸田城聖が唱えた「生命論」、そして第3代会長(後に名誉会長)である池田大作 平和思想によって、教義と政治・社会実践の橋渡しが行われました。池田氏は冷戦下の激しい東西対立を目の当たりにし、資本主義(自由主義)と共産主義(全体主義)の双方が人間を手段化していると厳しく批判。「人間それ自体の幸福と生命の尊厳を最高価値とする」という観点から、生命尊厳の中道主義を学会の根本規範として体系化していきました。
学会の教義体系において、中道とは「足して二で割るような安易な妥協」を意味しません。左右のイデオロギーが人間を教条的な枠組みに従属させるのに対し、制度や国家よりも「生身の人間の苦悩」を救済の起点に置く立場を指します。この論理構造こそが、保守(右派)の伝統主義や国家主義とも、革新(左派)の階級闘争論や教条的平和主義とも一線を画す「第三の道」として提示された理由です。