「新倉敷駅に降りたのに、美観地区の案内板がどこにも見当たらない」「ホテルを予約したつもりが、繁華街から車で30分も離れた新幹線の駅前だった」――旅行コミュニティサイトやSNSでは、こうした戸惑いの声が今も定期的に投稿されています。この混乱の根底には、駅名の命名史と都市構造の乖離という明確な原因が存在します。
歴史を遡ると、新倉敷駅はかつて「玉島駅(たましまえき)」という名称でした。1975年の山陽新幹線岡山―博多間開業に伴い、倉敷市西部の玉島地区に新幹線駅が新設された際、自治体名冠称として「新倉敷駅」へと改称された経緯があります。しかし、倉敷市の中心地や市役所、商業集積地、そして名高い観光拠点である倉敷美観地区は、古くから倉敷駅の南側に広がっています。
新倉敷駅と倉敷駅の直線距離は約9.3キロメートル。東京で例えるなら東京駅と品川駅、あるいは新宿駅と荻窪駅ほど離れています。「新横浜駅」や「新大阪駅」のように地下鉄や在来線が密密に直結し、駅前自体が巨大な商業ゾーンを形成しているメガステーションの感覚で新倉敷駅へ降り立つと、そのローカルな佇まいに強い違和感を覚えることになります。この「駅名の錯覚」を事前に認識しておくことが、失敗しない旅の第一歩です。