「恩知らず」という言葉は、本来なら他人を非難する際に使われる極めて攻撃的な言葉だ。しかし、この歌詞の中で中島みゆきは自らを「恩知らず」と称し、去りゆく潔さを歌い上げる。愛された記憶や受けた恩義に縋るのではなく、あえて「嫌われ役」を買って出てでも過去を断ち切る——そこに描かれているのは、自虐ではなく究極の自立心だ。
J-POPのラブソングが往々にして未練や傷ついた心を直接的に吐露するのに対し、彼女の描く世界はどこまでも力強く、同時に痛々しいほど優しい。誰かを深く愛したからこそ、あえて悪者になって立ち去る。そんな人間の美しさと哀しさを同時に表現した詞世界こそが、世代を超えて聞き手の胸を強く打つ最大の理由と言える。