長年にわたり『サザエさん』の屋台骨を支えてきたアナゴさんですが、実は原作コミックスにはほとんど登場しない「実質的なアニメオリジナルキャラクター」であるという点は、一般層にあまり知られていない盲点です。
長谷川町子の原作4コマ漫画にも、マスオの同僚としてアナゴさんに酷似した風貌の男性がごく稀に登場するコマは存在します。しかし、確固たるキャラクター名や詳細な人格設定が与えられていたわけではありませんでした。1969年にスタートしたフジテレビ版アニメの放送が長期化するなかで、マスオのサラリーマンとしての日常や社外での交友関係を豊かに描写するための相棒として、制作スタッフの手によって現在の「アナゴさん」へと昇華された経緯があります。
「27歳・恐妻家・愛すべき酒飲み」というキャラクター性は、激動の昭和から平成、令和へと移り変わるアニメ制作の歴史の中で、現場のクリエイターたちが日本の働く男性の哀愁とユーモアを注ぎ込みながら大切に育て上げてきた結晶なのです。