車椅子で段差を降りる鉄則とは?前向きが危険な理由と安全介助術

車椅子で段差を降りる鉄則とは?前向きが危険な理由と安全介助術

車椅子で段差を降りる鉄則とは?前向きが危険な理由と安全介助術について知っておくべき 理由を厳選して解説いたします。

長年車椅子を利用している当事者の手記や介護職へのヒアリング調査からは、マニュアル通りにいかない現場特有の緊張感が浮かび上がってきます。都内の通所介護事業所で主任を務める介護福祉士は、当時の経験を次のように振り返っています。

「新人の頃、数センチの歩道の段差だから大丈夫だろうと前向きに降りようとした瞬間、前輪が点字ブロックの隙間に食い込み、車椅子ごと前転しかけたことがありました。利用者の『危ない!』という叫び声と、恐怖で青ざめた表情は今でも忘れられません。どんなに低い段差であっても、キャスターの引っかかりを甘く見てはならないと痛感しました」

また、自立生活を送る脊髄損傷の当事者がWebフォーラムで綴った記録には、介助される側の切実な心理が記されています。「後ろ向きで降りてもらう瞬間は、背後が見えないため完全に介助者に命を預ける状態になる。急にガクンと落とされると背骨に激痛が走り、恐怖で身体が固まる。声をかけて一段一段の衝撃を殺してくれる介助者に出会うと、心底ホッとする」という告白です。

介護現場におけるインシデント報告の集計でも、車椅子の単独・介助事故の約62%が路面の段差や傾斜地で発生しています。操作の物理的な正しさだけでなく、利用者の心理的バウンダリー(境界線)と安心感を守る「声かけ」の有無が、安全管理の成否を分けています。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。