日本映画史におけるヤクザ映画の歴史は、そのまま名優たちの葛藤と進化の歴史でもあります。1960年代の高倉健氏や鶴田浩二氏に代表される「義理と人情」を描いた任侠路線から、1970年代に入ると深作欣二監督の金字塔『仁義なき戦い』に代表される「実録ヤクザ路線」へと劇的な転換を遂げました。
『仁義なき戦い』の歴代キャストを見渡すと、菅原文太氏を筆頭に、松方弘樹氏、梅宮辰夫氏、千葉真一氏、成田三樹夫氏、金子信雄氏など、日本映画界の至宝とも言える怪優たちが名を連ねています。特に金子信雄氏が演じた狡猾で保身に走る山守組長や、成田三樹夫氏が漂わせた冷徹で知性的な佇まいは、従来の「正義と悪」という二元論を解体し、人間の剥き出しの欲望をスクリーンに焼き付けました。
1990年代に入ると、主戦場は劇場用映画からオリジナルビデオ、いわゆる「Vシネマ」へと広がります。レンタルビデオ店の普及とともに、「Vシネマ四天王」と称された竹内力氏、哀川翔氏をはじめ、白竜氏、小沢仁志氏、本宮泰風氏、山口祥行氏らが台頭しました。彼らは低予算かつ過密な撮影スケジュールという過酷な環境のなかで、銃撃戦や立ち回りのリアリティを極限まで追求。単なる悪役にとどまらない、筋を通す男たちの美学を創り上げました。
時が流れ、昭和の映画界を支えた巨星たちの多くが鬼籍に入りました。渡瀬恒彦氏や志賀勝氏、そして名バイプレイヤーとして数々のアウトローを演じた名優たちの訃報は映画ファンに深い喪失感を与えましたが、彼らが遺した肉体言語と演技のスピリットは、次の世代へと脈々と受け継がれています。