結婚と同時に羽野晶紀が直面したのは、数百年の歴史を持つ和泉流宗家という巨大な看板だった。能楽や狂言の世界は、現代の一般的な感覚とは一線を画す厳格な規律と家系制度の上に成り立っている。稽古の厳しさはもちろん、後援会への配慮や興行を支える裏方としての役目など、妻に求められるハードルは想像を絶するものだった。
さらに世間の注目を集めたのが、「セッチー」の愛称で強烈なキャラクターを発揮していた義母・和泉節子の存在だ。宗家を取り仕切るプロデューサーとしての剛腕ぶりと嫁姑関係をめぐり、週刊誌各誌は連日のように「嫁姑バトル」「孤立する新妻」といった扇情的な見出しを躍らせた。外野の喧騒は容赦なく若い二人を取り囲んでいく。