これほど高額な化粧まわしだが、関取本人が財布を開いて購入することはほぼ皆無に近い。新十両昇進や新入幕という人生の節目において、後援会や出身校、出身自治体、そして何より熱烈な個人支援者である「タニマチ」から名誉とともに贈呈されるのが大相撲の伝統だ。
タニマチ文化は、江戸時代から続く独自のパトロン制度。企業のトップや篤志家が「将来の横綱・大関に」と期待を込め、数百万円から1000万円の私費を投じて化粧廻しをあつらえる。化粧廻しに企業ロゴや意匠が入ることも多いが、これは単なる商業広告というよりも、力士の人生を丸ごと支える男気と絆の証。贈られた関取は、その重厚な帯を締めて土俵に立つことで恩義に応え、タニマチは国技館の晴れ舞台で我が名や意匠が喝采を浴びる瞬間に無上の誇りを感じる。