食事制限を開始した患者が最も陥りやすい罠が、低タンパク食によるカロリー不足です。「肉や魚を減らせばよい」と考え、全体の食事量をただ減らしてしまうと、生体維持に必要な総エネルギーが決定的に不足します。
生体はエネルギーが不足すると、自らの筋肉などの体タンパクを分解してエネルギーを補おうとします。その結果、せっかく食事からのタンパク質を減らしているにもかかわらず、体内から大量の老廃物が発生して腎臓に負担をかけるという逆転現象が生じます。これがいわゆるたんぱく質制限のデメリットの真相であり、骨格筋量の急激な減少と低栄養状態を招く「タンパク質・エネルギー消耗状態(PEW)」を引き起こす直接的な引き金となります。
また、高齢者においては過度な制限がサルコペニアやフレイルを急速に進行させるリスクがあるため、2026年現在の臨床現場では「十分なエネルギー摂取(25〜35kcal/kg体重/日)の確保」が絶対条件として指導されています。油分(良質な植物性油脂やMCTオイル)やでんぷん製品を上手に活用し、タンパク質を含まないカロリー源を確保する技術が不可欠です。