「トゲくらい放っておけば新陳代謝で自然に出てくる」という俗説を耳にすることがありますが、これはトゲの種類と刺さった深さによって全く異なる極めて危険な思い込みです。
人間の皮膚はターンオーバー(新陳代謝)を繰り返しており、基底層から角質層へと細胞が押し上げられるため、表皮の極めて浅い層にとどまっている微細なトゲであれば、数日から数週間で自然脱落することもあります。しかし、真皮層や皮下組織に達したトゲ、または有機物(植物の枝、バラのトゲ、動物の骨など)は状況が一変します。
放置した場合に引き起こされる代表的な医学的リスクは次の通りです。
- 細菌感染・化膿性炎症:トゲの表面に付着していた黄色ブドウ球菌やレンサ球菌が皮下で増殖し、発赤、腫脹、ズキズキとした拍動性の激痛を引き起こす。重症化すると「ひょう疽(瘭疽)」や蜂窩織炎(ほうかしきえん)へ進展する。
- 異物肉芽腫の形成:異物を排除できなかった免疫システムがトゲの周囲を線維組織で包み込み、硬いしこり(肉芽腫)を形成する。長期間痛みが残る上、最終的に皮膚切開手術が必要になる。
- 破傷風(テタナス)のリスク:土壌やサビた金属片に含まれる破傷風菌が微小な傷口から侵入すると、神経毒素によって全身の筋肉痙攣や呼吸困難を招く命に関わるリスクがある。